要請書「すべての食品に遺伝子組み換え表示を」

2017日消連第16号
2017年6月30日

消費者庁長官 岡村和美様
遺伝子組換え表示制度に関する検討会座長 湯川剛一郎様

特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠啓祐
共同代表 大野和興
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
代表 天笠啓祐

すべての食品に遺伝子組み換え表示を
~消費者の権利を保障する表示制度を求めます~

 私たち消費者・市民は、2017年4月に始まった「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」の議論の行方に注目しています。現行の遺伝子組換え表示制度には不備が多く、消費者は自主的かつ合理的な選択の機会を奪われています。消費者は食品を購入する際、基本的に表示からしか情報を得ることができません。直接手に取って自分の目で確認できる情報、すなわち表示が正しくなかったり、不十分だったり、誤解を招くようなものでは、私たち消費者は安心して食品を選ぶことができないのです。遺伝子組み換え表示は食の安全にかかわらない制度であるという主張もありますが、その食品に何が使われているか、どのように作られているかが正しく表示されていなければ、食の安全は確保されないと考えます。消費者の「知る権利」「選ぶ権利」を保障する遺伝子組換え表示制度への改正を求め、以下要望します。

1.すべての食品を遺伝子組み換え表示の対象とすること
 現行の遺伝子組換え表示制度は、義務表示の対象品目が8つの農作物と33食品群に限られているために、遺伝子組み換え食品を食べたくない消費者が遺伝子組み換え食品を避けることができません。さらに、義務表示の対象品目であっても、食品の重量に占める割合が上位3位までで且つ全重量の5%以上でなければ「遺伝子組換え」と表示する義務はないため、33食品群の多くの品目が表示を逃れています。
大豆油やコーン油、ナタネ油、しょうゆといった、義務表示対象の農作物を原料とする加工食品が表示対象外となったのは、これら最終製品から組み換えられたDNAやこれによって生じたタンパク質が検出できないからとされています。しかし、食用油やしょうゆは私たちの食生活に欠かせないもので、遺伝子組み換え原料を使っているか否か消費者がもっとも知りたいと思っている食品です。現在の表示要件の一つである「組み換えられたDNA等が検出可能であること」が、消費者の知る権利・選ぶ権利を奪っています。EUでは、食品の流通経路を生産段階から消費段階まで追跡可能なトレーサビリティの仕組みが、全食品を表示の対象とする制度を担保しています。第1回検討会で消費者庁が示した「EUにおける遺伝子組換え食品の表示及び監視の状況調査の結果」によって、最終製品から組み換えられたDNAが検出できない油脂等の加工食品も書類確認と原料のサンプル分析によって監視は可能であることが明確になりました。
また、遺伝子組換えと非組み換えが分別されていない作物を原材料とする場合には「遺伝子組換え不分別」と表示しなければなりませんが、「不分別」では組み換え原料を使っているのか使っていないのか分かりません。消費者にとって分かりにくい「不分別」表示は廃止すべきです。
遺伝子組み換え原料を使用していれば「遺伝子組換え」と表示する、消費者にとって分かりやすい表示制度への改正を求めます。

2.意図せざる混入率を0.9%未満に引き下げること
 現行の制度では、適切な分別流通管理を行っていれば、5%以下の意図せざる混入が認められています。意図せざる混入率5%は、韓国(3%)、台湾(3%)、オーストラリア・ニュージーランド(1%)、EU(0.9%)と比べても高すぎます。しかも、遺伝子組み換え原料が混じっていても5%以下であれば「遺伝子組換えでない」と表示できるのも問題です。「遺伝子組換えでない」と書いてあれば、消費者は遺伝子組み換え原料を使っていないと理解します。現在の「遺伝子組換えでない」の表示は消費者を誤認させるもので、消費者の知る権利・選ぶ権利を阻害しています。
意図せざる混入率をEU並みの0.9%未満に引き下げることを求めます。「遺伝子組み換えでない」の表示については、すべての食品を遺伝子組換え表示の対象とすれば、必要なくなると考えます。

 最後に、検討会について意見を述べます。5月20日開催の第2回検討会は「消費者団体等からのヒアリング」でした。ところが、発表者の中には消費者の視点がほとんどなく、事業者の立場で発言した団体があり、違和感を覚えました。消費者団体にも多様な考え方があるのは当然ですが、事業者のような発言を消費者団体の考え方だと捉えられるとすれば、看過できません。さらに、消費者団体からのヒアリングが1回なのに対し、事業者のヒアリングが2回予定されていることにも抗議します。消費者庁の使命は「消費者が主役となって、安心して安全で豊かに暮らすことができる社会を実現する」ことにあるはずで、何より消費者を優先させるべきではないでしょうか。検討会開催要領には「事業者の実行可能性を確保しつつ」とありますが、それよりも「自主的かつ合理的な選択の機会の確保を実現するために消費者が求める情報(略)踏まえ、今後の遺伝子組換え表示制度の在り方について幅広く検討を行う」ことが検討会の本来の趣旨であるはずです。改めて消費者団体からきちんとヒアリングを行うことを求めます。

以上