新たな遺伝子操作技術による作物についての公開質問状への回答(農水省・環境省)
7月に農水省と環境省宛てに出した「新たな遺伝子操作技術による作物についての公開質問状」に対し、9月22日に食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク(事務局:遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン)主催の院内学習会で、農水省・環境省を代表して環境省の平山さんから回答をいただきましたので紹介します。
<回答>
ゲノム編集やRNAiなど新しい技術がいろいろな分野で利用されています。
ゲノム編集では、例えば植物の場合は、基本的には従来の遺伝子組み換え技術のようにアグロバクテリウムを使わないと難しいようだが、生物種によっては直接細胞に遺伝子を入れるだけで宿主の遺伝子を改変できるなど、多様な使い方ができるようである。実際に作出されたものを見てみないとわからないが、聞いている限りではカルタヘナ法の規制の対象になるものもあるし、そうでないものもあるようである。
RNAiでも同様で、二本鎖RNAをどのように発現しているのかがポイントであり、宿主の遺伝子に二本鎖RNAを発現させるような遺伝子を組み込んだ上で、これを発現させるのであれば、カルタヘナ法の規制の対象になる。
カルタヘナ議定書の第3条(i)の「現代のバイオテクノロジー」の定義の「a」には、「生体外における核酸加工の技術」とあり、いわゆる遺伝子組み換え技術を定義しているが、括弧書きで「細胞又は細胞小器官に核酸を直接注入することを含む」とあることから、一見、宿主の遺伝子に組み込まずに直接細胞に遺伝子を入れて宿主の遺伝子を改変する場合も、カルタヘナ議定書の対象としているように見える。しかしながら、カルタヘナ議定書第3条の(g)では、「改変された生物」について、「現代のバイオテクノロジーの利用によって得られる遺伝素材の新たな組合せを有する生物」と定義して規制の対象としており、カルタヘナ法はこれを担保していることに留意する必要がある。
ゲノム編集等の新たな技術の利用により得られた生物であっても、細胞外で加工した核酸又はその複製物を有する生物に該当するものであれば、カルタヘナ法に基づく生物多様性影響評価をすることになるが、この定義に当てはまらない生物もおそらく出てくる。そういった生物については、平成28年8月30日に環境省の中央環境審議会自然環境部会遺伝子組換え生物等専門委員会が報告した、カルタヘナ法の施行状況の検討結果の中で、「その取扱いについて慎重に検討すべき」との意見が出ていることから、環境省としても、生物の多様性の確保の観点から慎重に検討を進めているところである。
以上